介護施設や病院、クリニックでは、勤務日をシフトで決める人や、週の勤務日数が少ないパートの人が多く働いています。有給の付与日数が人ごとに違い、「代わりの人がいないので休ませにくい」という声も出やすい職場です。
この記事では、介護・医療の職場で有給を管理する担当者の方に向けて、シフト制の人の付与日数の決め方、年5日の取得義務の対象、人手が足りないときの時季変更権の扱いを、条文と厚生労働省の資料、最高裁判所の判決で確認します。
結論
- シフト制でも、パートでも、有給の付与の要件は同じ(6か月の継続勤務と、全労働日の8割以上の出勤)
- 所定労働日数を決めていないことを理由に、付与しないことは認められない。算出しにくい場合は、労働日数の実績を所定労働日数とみなして計算してよいとされている
- 付与日数が10日以上になれば、パートでも年5日の取得義務の対象
- 「シフトを組んだ日だから有給は使わせない」という扱いは認められない
- 時季変更権は「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られる。単に「代わりの人がいない」「忙しい」だけでは使えないと、厚生労働省のリーフレットは説明している
医療・福祉の取得率は、平均より低くない
先に統計を確認しておきます。厚生労働省の「令和7年就労条件総合調査」では、2024年の1年間の年次有給休暇の取得率は次のとおりです。
| 区分 | 付与日数 | 取得日数 | 取得率 |
|---|---|---|---|
| 全体 | 18.1日 | 12.1日 | 66.9% |
| 医療,福祉 | 17.7日 | 12.1日 | 68.4% |
| 宿泊業,飲食サービス業(最も低い) | 15.9日 | 8.0日 | 50.7% |
| 電気・ガス・熱供給・水道業(最も高い) | 19.5日 | 14.7日 | 75.2% |
医療・福祉の取得率は、全体の平均をやや上回っています。ただし、この調査は常用労働者30人以上の民営企業が対象で、パートタイム労働者は含まれていません。また平均の値なので、職場ごと・人ごとの差は分かりません。
年5日の取得義務は1人ずつの義務です。業種の平均が高くても、5日に届いていない人が1人いれば、その人の分が問題になります。
シフト制でも、付与の要件は同じ
厚生労働省は、シフトで勤務日が決まる働き方について「シフト制留意事項」を出しています。2026年6月の改正で、年次有給休暇の記述が加わりました。
シフト制労働者の場合であっても、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤したときは、以下の労働基準法所定の日数の年次有給休暇を付与しなければなりません(労働基準法第 39 条第1項、第2項)。
ここでいう「シフト制」は、契約の時点では勤務日や勤務時間を決めず、1週間や1か月ごとのシフト表で初めて決まる働き方です。同じ年の10月に出た事業主向けのリーフレットは、三交替勤務のように、一定期間の労働日数・労働時間数が決まっていて、就業規則等の勤務パターンを組み合わせる形は除くとしています。病棟の三交替がこちらに当たる場合もありますが、その場合も付与の要件そのものは同じ労働基準法第39条です。
所定労働日数が決まっていない人の付与日数
週の所定労働日数が少ない人は、日数に応じて少ない日数が付与されます(比例付与)。
次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前二項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数…と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。
対象は、週の所定労働時間が30時間未満で、かつ週の所定労働日数が4日以下(週で決めていない場合は、年間216日以下)の人です(労働基準法施行規則 第24条の3)。日数は次の表のとおりです。
| 週の所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4日 | 169〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 73〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 48〜72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
シフト制の人は、契約で所定労働日数を決めていないことがあります。留意事項は、その場合の扱いを次のように書いています。
あらかじめ所定労働日数を定めていない場合に、そのことを理由にシフト制労働者に年次有給休暇を付与しないことは認められません。一方で、所定労働日数を算出しがたい場合には、次の日数を、基準日における1年間の所定労働日数とみなして年次有給休暇の付与日数を算出して差し支えありません。
ここでいう「次の日数」は、同じ留意事項で次の2つとされています。
| 付与する時点 | 1年間の所定労働日数とみなす日数 |
|---|---|
| 入社から6か月経過後 | 入社から6か月間の労働日数の実績を2倍した日数 |
| 入社から1年6か月経過後以降 | 前年の労働日数の実績 |
たとえば、入社から6か月間の勤務日が78日なら、78日×2=156日を1年間の所定労働日数とみなします。表の「121〜168日」に当たるので、付与日数は5日です。
契約で「週4日程度」のような目安となる労働日数を決めている場合は、その日数で計算した付与日数が、実績で計算した日数を上回る場合に限り、目安の日数を使ってもよいとされています。リーフレットの例では、上の78日の人に「週4日程度」の目安があれば、付与日数は7日になります。
実績から出す日数と、目安から出す日数
リーフレットの例① 実績から出す(原則)
- 入社から6か月間の勤務日78日
- 2倍して1年間の所定労働日数とみなす156日
- 比例付与の表で当たる区分121〜168日
② 目安の日数から出す
- 契約で決めた目安の日数週4日程度
- 1週間の所定労働日数とみなす週4日
- 比例付与の表で当たる区分週4日・6か月
②が①を上回るときだけ、②の日数で付与してよい(この例では7日)
付与日数を確認したい場合は、入社日と週の所定労働日数から計算できるツールもあります。
付与日数が10日になれば、パートも年5日の対象
年5日の取得義務は、その回に付与される日数が10日以上の人が対象です。留意事項も、シフト制の人について同じことを書いています。
また、シフト制労働者の場合であっても、法定の年次有給休暇の付与日数が 10 日以上である場合には、そのうち5日(既に取得した日数があれば、5日から既に取得した日数を控除した日数)について、法所定の基準日から1年以内に時季を定めて取得させなければなりません(労働基準法第 39 条第7項)。
上の表で太字にしたところが、10日に届く時期です。
10日に届く付与回
例- 週4日の人は、勤続3年6か月で10日になり、年5日の対象になる
- 週3日の人は、勤続5年6か月で10日になる
- 週2日以下の人は、表の範囲では10日に届かない
パートの人が多い職場では、同じ「パート」でも、年5日の対象の人と対象でない人が混ざります。 しかも、勤続年数が伸びて10日に届いた年から対象に変わります。期限の数え方や時季指定のルールは、年5日の取得義務の記事で整理しています。
「シフトを組んだ日だから使わせない」は認められない
有給は、原則として本人が請求した時季に与えるものです(労働基準法第39条第5項)。2026年10月の事業主向けリーフレットは、シフト制の場合について次のように書いています。
そのため、「シフトの調整をして働く日を決めたのだから、その日に年休は使わせない」といった取扱いは認められません。
人手が足りないときの時季変更権
介護・医療の職場で一番の論点になりやすいのが、「その日は代わりの人がいない」という場面です。使用者が請求された日を変えられるのは、次の場合に限られます。
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
この「事業の正常な運営を妨げる場合」について、同じリーフレットは次のように説明しています。
使用者は、事業の正常な運営を妨げる場合(同一期間に多数の労働者が休暇を希望したため、その全員に休暇を付与し難い場合など)に限って、年次有給休暇の時季を変更することができます。単に、「代わりの人がいないから」、「忙しいから」というだけでは、労働者の請求した日に年次有給休暇を使わせないといった取扱いはできません。
勤務割の職場について、最高裁が示した考え方
勤務割(シフト)で人を配置する職場での時季変更権について、最高裁判所は次のように判断しています。
労基法三九条三項ただし書にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」か否かの判断に当たつて、代替勤務者配置の難易は、判断の一要素となるというべきであるが、特に、勤務割による勤務体制がとられている事業場の場合には、重要な判断要素であることは明らかである。したがつて、そのような事業場において、使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできないと解するのが相当である。
判決の「三九条三項ただし書」は当時の条番号で、いまの第39条第5項ただし書に当たります。
一方で、別の最高裁判決は、代わりの人を確保する配慮をしなかった場合でも、時季変更権の行使が適法になる場合があるとしています。
…当該事業場における勤務割の変更の方法及びその頻度、使用者の従前の対応、代替勤務の可能性、週休制の運用、当該時季指定の時期などに照らして、使用者が通常の配慮をしたとしても代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況にないときには、右時季変更権の行使は適法である。
2つの判決を合わせると、判断の分かれ目は「通常の配慮をすれば、シフトを変えて代わりの人を置くことが客観的にできたかどうか」です。人手が足りないこと自体ではなく、その日にシフトの組み替えができたかが問われます。個別の場面でどちらに当たるかは、事情によって変わります。
有給を取った日の賃金
時給で働く人が有給を取った日の賃金も、留意事項に例があります。「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」で払う場合は、次のとおりです(労働基準法第39条第9項)。
- 時給の人:時給 × その日の所定労働時間(一般的には、シフト表で確定した時間)
- 日給の人:その日給の額
1日の勤務時間がシフトで日によって違う人は、有給を取った日にシフト表で決まっていた時間で計算する形になります。
確認する点
介護・医療の職場で有給を管理するときは、次の点を確認する形になります。
- 1人ずつの基準日と、その回の付与日数(週の所定労働日数、または労働日数の実績から)
- 所定労働日数を決めていない人の扱い(実績の2倍・前年の実績・目安の日数のどれで計算したか)
- 付与日数が10日以上の人の一覧(年5日の対象。勤続で10日に届いた人を含む)
- 対象の人の、基準日からの取得日数と期限
- 有給の請求に対して時季を変更するときの、シフトの組み替えを検討した記録
年5日の状況を確認する
年5日の取得状況を1人ずつ確認するための資料を用意しています。基準日・取得済み日数・残りの日数を確認する項目をまとめたものです。
ヤスモは、付与分ごとの取得状況を従業員ごとに管理し、年5日の達成状況を取得ペースから区分して表示するツールです。週の所定労働日数が違う人が混ざっていても、付与日数は1人ずつ計算します。
この記事で確認した条文・資料
- 労働基準法:第39条第1項・第3項・第5項・第7項・第9項
- 労働基準法施行規則:第24条の3
- 厚生労働省「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(令和4年1月7日、令和8年6月19日改正)(PDF)
- 都道府県労働局・労働基準監督署「『シフト制』で働く場合の年次有給休暇について」(令和8年10月)(PDF)
- 最高裁判所第二小法廷 昭和62年7月10日判決(昭和59年(オ)第618号)(裁判所ウェブサイト)
- 最高裁判所第三小法廷 平成元年7月4日判決(昭和62年(オ)第1555号)(裁判所ウェブサイト)
- 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査の概況」(PDF):第5表
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