更新日 2026年9月12日

年5日取得義務とは?中小企業が知っておくべきポイント

年5日の有給取得義務について、対象になる人、期限の数え方、5日に含まれる取得のしかた、管理簿の保存義務、罰則までを整理します。期限の計算例と、期限までに5日取得できなかったときの扱い、よくある質問つき。

年5日の有給取得義務は、年10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての労働者が対象です。期限は会計年度の末日ではなく、その人に有給が付与された日から1年以内です。中小企業に猶予期間はなく、2019年4月から一律に適用されています。

この記事では、対象者・期限の数え方・5日に含まれる取得のしかた・管理簿の保存義務・罰則を、実務でつまずきやすい順に整理します。期限の計算例と、期限までに5日取得できなかったときの扱いも後半にまとめました。

年5日の取得義務とは

2019年4月に施行された労働基準法第39条第7項により、使用者には次の義務があります。

  • 年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者について
  • 付与した日から1年以内に
  • 5日分は、時季を定めて取得させなければならない

「取得させる」義務なので、労働者から申し出がなかった場合でも、使用者側が取得日を指定する必要があります。本人が申請しなかったから未達成でよい、という整理にはなりません。

対象になるのは誰か

判断の基準は雇用形態ではなく、その年に付与された日数が10日以上かどうかの一点です。

区分年5日義務の対象
正社員(入社6か月経過・10日付与)対象
管理監督者対象
有期雇用・契約社員(10日以上付与)対象
パート・アルバイト(比例付与で10日以上)対象
パート・アルバイト(付与が10日未満)対象外

管理監督者は労働時間の規制からは外れますが、年次有給休暇と年5日義務の対象からは外れません。ここは実務で見落とされやすい点です。

パート・アルバイトが対象になるタイミング

所定労働日数が少ない場合は比例付与になり、勤続年数が伸びると10日に到達します。

週の所定労働日数10日に達する時期
週4日勤続3年6か月
週3日勤続5年6か月
週2日以下10日に到達しない(対象外)
10日に到達した時点から年5日の対象になります(日数は例)

週3日勤務のパートの方が、勤続5年6か月を過ぎた時点で静かに対象に入る、というケースが起こります。入社時の判定だけで「対象外」と決めてしまうと取りこぼします。

期限は「年度末」ではありません

実務でもっとも間違いが多いのがここです。

  • 期限はその人に有給が付与された日から1年間
  • 入社日を基準に付与している会社では、期限は従業員ごとに全員違う
  • 4月1日などに一斉付与している会社でも、入社直後の初回だけは基準日がずれる

つまり「今年度末までに全員5日」という管理では、期限を過ぎた人を見逃す可能性があります。3月に期限が来る人もいれば、9月に来る人もいるためです。

期限は付与日から1年間で、従業員ごとに違います(日付は例)

期限の計算例

入社日を基準に付与している会社の場合、期限は次のように決まります。

入社日10日付与される日(基準日)年5日の期限
2026年4月1日2026年10月1日2027年9月30日
2026年7月16日2027年1月16日2028年1月15日
2026年11月1日2027年5月1日2028年4月30日

基準日になるのは、雇入れの日から6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した日です。

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
出典: 労働基準法 第39条第1項

期限はその基準日から1年以内なので、入社月がばらばらなら、期限もばらばらになります。2年目以降は基準日が1年ごとに来るため、期限も1年ごとにずれていきます。

⚠️ 上の表は、付与日数が最初から10日になる場合の例です。パート・アルバイトで比例付与になる場合は、10日に到達した年の基準日が起点になります。

5日に数えられる取得のしかた

次の3つは、いずれも5日にカウントされます。

取得のしかた内容
労働者の請求による取得通常の有給申請
計画的付与(計画年休)労使協定で日を定めて計画的に取得させる
使用者による時季指定使用者が労働者の意見を聴いたうえで日を指定する
半日は0.5日として数えます。時間単位年休は年5日に数えません

数え方の注意点が2つあります。

  • 半日単位の取得は、0.5日として数えられます
  • 時間単位の年次有給休暇は、5日には数えられません

時間単位年休を積極的に運用している会社ほど、「合計では取っているのに義務は未達成」という状態が起きやすくなります。

使用者が時季を指定するときのルール

使用者による時季指定には条件があります。

  • あらかじめ労働者に意見を聴き、その意見を尊重するよう努めること
  • すでに5日以上取得している労働者には、時季指定をすることができない
  • 就業規則に、時季指定の対象者と方法を記載しておくこと

年次有給休暇管理簿の作成と保存

労働基準法施行規則第24条の7により、使用者には管理簿の作成義務があります。

  • 労働者ごとに、時季・日数・基準日を記録する
  • 有給を与えた期間中と、その期間が満了した後3年間保存する
  • 様式は法定されていない(自社の形式で構わない)

労働者名簿や賃金台帳と合わせて調製することもできます。様式が自由なぶん、後から「いつ付与して、どこから消化したのか」を説明できる形で残せているかが問われます。

罰則

年5日の取得義務に違反した場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります(労働基準法第120条)。厚生労働省の資料では、この違反は対象となる労働者1人ごとに数えられるとされています。

年次有給休暇管理簿の作成・保存は、労働基準法施行規則第24条の7で定められています。

期限までに5日取得できなかったとき

条文は、5日を与える期間を「基準日から一年以内」と区切っています。

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
出典: 労働基準法 第39条第7項

つまり、義務の単位は「その人の基準日から1年」という期間です。期間が終わったあとに取得させることを、終わった期間の5日として数えてよいとは書かれていません。そして次の期間には、また新しく5日の義務が発生します。前の期間の不足分を翌年に持ち越して埋める、という仕組みは条文にありません。

罰則は前の章のとおりです。

⚠️ 未達成が起きたあとに残るのは、記録の問題です。年次有給休暇管理簿には時季・日数・基準日を労働者ごとに書くため、期限をまたいで取得した分がどの期間のものなのかを、あとから説明できる形で残っている必要があります。書き方は年次有給休暇管理簿の作り方にまとめています。

中小企業でつまずきやすい3つの点

ここまでの内容を踏まえると、実務で問題になるのは制度の理解よりも管理のしかたです。

1. 基準日が人によってバラバラで、期限を横並びに見られない

入社日基準の会社では、期限が365通りに散らばります。一覧で「期限が近い順」に並べられないと、気づいたときには過ぎています。

2. 繰越分と当年度分のどちらから消化したかが分からない

有給は2年で時効消滅します。前年の繰越分から先に消化していれば消滅を防げますが、どの付与分から何日消化したかを人ごとに追う必要があり、手作業では現実的ではありません。ここが曖昧だと、管理簿に書いた日数の根拠も説明できなくなります。

3. 付与そのものが自動で増えていく

入社日基準なら毎月誰かの付与日が来ます。一斉付与でも、初回だけは入社日から計算する必要があります。付与の計算を手で回している限り、取得の管理を始める前段階で工数が消えます

よくある質問

本人が「有給はいらない」と言っている場合も、5日取得させる必要がありますか

条文は使用者に対して「与えなければならない」と書いており、労働者の申し出があることを要件にしていません(労働基準法 第39条第7項)。ただし、労働者の請求による取得や計画的付与ですでに与えた日数がある場合は、その日数分について使用者が時季を定める必要はありません。

前項の規定にかかわらず、第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。
出典: 労働基準法 第39条第8項

計画的付与だけで年5日を満たすことはできますか

できます。ただし計画的付与にできるのは、付与日数のうち5日を超える部分です(労働基準法 第39条第6項)。付与が10日の人なら、計画的付与に回せるのは最大5日までという形になります。

⚠️ 計画的付与には、書面による労使協定が必要です。会社が単独で日を決められる制度ではありません。

時間単位で取った分は5日に数えられますか

数えられません。時間単位の年次有給休暇は、書面による労使協定が必要で、年5日以内という上限があります(労働基準法 第39条第4項)。合計の取得時間が多くても、年5日の取得義務は別に満たす必要があります。

管理監督者も対象ですか

対象です。労働基準法第41条が適用除外にしているのは「労働時間、休憩及び休日に関する規定」で、年次有給休暇はここに含まれていません。

育児休業から復帰した人は、出勤率が足りず付与されないのではありませんか

育児休業・介護休業の期間、産前産後の休業の期間、業務上の負傷や疾病の療養のために休業した期間は、8割以上出勤したかどうかの計算では出勤したものとみなされます(労働基準法 第39条第10項)。したがって付与は行われ、付与日数が10日以上であれば年5日の対象になります。

ヤスモでできること

ヤスモは、年5日の取得義務の管理に特化したツールです。勤怠管理システムの一機能ではなく、有給の付与・消化・期限だけを扱います

  • 付与日・付与日数を、入社日基準/一斉付与の設定にしたがって自動で計算します
  • 消化は古い付与分から順に引き当てるため、時効消滅までの日数がわかります
  • 年5日の期限を従業員ごとに管理し、期限までの残り日数で並べ替えられます
  • 年次有給休暇管理簿を、法定の保存要件(時季・日数・基準日)を満たす形で出力できます
  • 期限を過ぎた分は、確認した記録を残せます
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年5日取得義務 確認シート

確認項目と従業員ごとの記入欄が入った A4 2枚です。社内の確認にも、顧問先へお渡しいただくのにも使えます。

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