更新日 2026年10月7日

時間単位年休は年5日に数えられない|半日単位との違いを条文で確認する

時間単位で取得した年次有給休暇が年5日の取得義務に算入されない根拠と、半日単位との違いを、労働基準法第39条第7項・第8項の条文と厚生労働省の資料で確認して整理します。

時間単位年休を導入している会社では、有給の取得実績そのものは増えます。1時間、2時間という単位で取れるので、取得の回数が目に見えて多くなるからです。

ところがこの取得は、年5日の取得義務には1日も算入されません。 年間40時間を時間単位で取得していても、年5日の観点では取得日数が0日のまま、ということが起こります。この記事では、その根拠を条文で確認し、算入される半日単位との違いを整理します。

結論

  • 時間単位年休は、何時間取得しても年5日に算入されない
  • 半日単位の取得は、1回につき0.5日として算入される
  • 根拠は、年5日の義務を定めた条文が「どの取得を差し引けるか」を限定して書いていること

年5日の義務は「第1項から第3項までの有給休暇」が対象

まず、年5日の取得義務を定めた条文を読みます。

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
出典: 労働基準法 第39条第7項

対象になっているのは「第1項から第3項までの規定による有給休暇」です。第1項は6か月経過後の10労働日、第2項は勤続年数に応じた加算、第3項は所定労働日数が少ない人の比例付与です。

差し引けるのは「第5項または第6項で与えた分」だけ

次が本題です。すでに取得した分を年5日から差し引く規定は、次の項にあります。

前項の規定にかかわらず、第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。
出典: 労働基準法 第39条第8項

差し引ける対象が「第五項又は第六項の規定により」与えた場合に限定されています。

  • 第5項=労働者が請求した時季に与える(労働者本人の請求による取得)
  • 第6項=労使協定による計画的付与

第4項はここに出てきません。 そして第4項が、時間単位年休の条文です。

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。
出典: 労働基準法 第39条第4項

つまり、時間単位で与えた分は、第8項が挙げる差し引きの対象に入っていないというのが条文上の構造です。

年5日に算入される取得と、算入されない取得

厚生労働省の資料も同じ整理

厚生労働省のリーフレット「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」にも、同じ内容が書かれています。半日単位年休の扱いを説明したQ&Aの中に、次の記述があります。

なお、時間単位の年次有給休暇については、使用者による時季指定の対象とはならず、労働者が自ら取得した場合にも、その時間分を5日から控除することはできません。
出典: 厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」

同じ資料は、制度の一覧を示した箇所でも、時間単位年休と特別休暇は年5日の確実な取得の対象とはならない、としています。

半日単位は算入される

一方で、半日単位の取得は年5日に算入されます。 同じ資料のQ&Aは、労働者が自ら半日単位で取得した場合、取得1回につき0.5日として、使用者が時季を指定すべき年5日から控除できるとしています。使用者が時季指定をするときに半日単位とすることも、労働者の意見を聴いた際に希望があれば差し支えないとされています。

半日単位年休は労働基準法に条文がありません。 第39条第4項が定めているのは時間単位年休だけです。半日単位は、労働者が希望し使用者が応じる形で運用されるもので、法律上の位置づけが時間単位とは異なります。この違いが、年5日への算入の有無に表れています。

数え方の違い

取得のしかた年5日への算入根拠
労働者本人の請求(1日単位)1日として算入第39条第8項(第5項による取得)
半日単位1回につき0.5日として算入厚生労働省の資料
計画的付与算入第39条第8項(第6項による取得)
使用者による時季指定算入第39条第7項そのもの
時間単位年休算入しない第8項に第4項が含まれていない
特別休暇(法定外の休暇)算入しない法定の年次有給休暇ではない

取り違えが起きやすい理由

時間単位年休を入れると、取得の記録そのものは増えます。 通院や子どもの送迎で1時間、2時間という取得が積み上がるので、管理簿には取得実績が並びます。

しかし年5日の集計は、そのうち日単位と半日単位の取得だけを数えます。記録が多いことと、年5日を満たしていることは別です。時間単位の取得が多い人ほど、この差が開きます。

年5日の対象になるのは、その回に付与された日数が10労働日以上の人です。時間単位年休は年5日を限度に与えられる制度なので、時間単位で取り切っても、年5日の観点では0日という状態がありえます。

確認する点

時間単位年休を導入している場合、次の点を確認する形になります。

  • 労使協定で時間単位年休を定めているか(第39条第4項は労使協定を前提にしています)
  • 管理簿で「日単位・半日単位」と「時間単位」を分けて集計できるか
  • 年5日の集計から時間単位の取得分を除いているか
  • 半日単位の取得を0.5日として数えているか

集計を日数と時間で分けていない場合、年5日の達成状況が実際より多く見えることになります。

罰則

年5日の取得義務に違反した場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります。第39条第7項は、罰則を定めた第120条第1号に列挙されている条文のひとつです。

次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
出典: 労働基準法 第120条

なお、時間単位年休を導入すること自体に問題があるわけではありません。制度としては第39条第4項が認めているものです。年5日の集計方法を分けておく必要がある、という話です。

時間単位年休の上限(年5日)は見直しが議論されている

時間単位年休を取れる日数の上限(年5日)については、見直しが議論されています。2026年10月7日時点では、まだ何も決まっていません。 経緯は次のとおりです。

時期内容
2025年1月厚生労働省の労働基準関係法制研究会の報告書が、時間単位年休の日数を「現在の5日間から直ちに変更すべき必要性があるとは思われない」と整理
2025年6月13日規制改革実施計画(閣議決定)が、上限の緩和を含む見直しの要否を労働政策審議会で検討し、令和7年度に結論を得るとした
2025年12月24日労働政策審議会 労働条件分科会(第206回)で、上限日数(5日)をどう考えるかが論点として示された
2026年9月16日同分科会(第211回)で議論が再開。同じ論点が「どのように考えるか」の形で示されている

規制改革実施計画の該当部分は次のとおりです。

時間単位年休の上限を、例えば年次有給休暇の付与日数の50%程度に緩和することなどの見直しの要否も含め、労働政策審議会において検討し、結論を得る。
出典: 規制改革実施計画(令和7年6月13日閣議決定)

「付与日数の50%」は、取得させなければならない日数ではありません。 時間単位で取れる日数の上限を広げるかどうか、という話です。また「例えば」とあるとおり、50%は検討の例として挙げられた数字で、見直すかどうか自体も検討の対象です。

分科会では、労働者側から年次有給休暇の趣旨を踏まえて1日単位の休暇を確保することが重要だという意見が、使用者側から上限日数を延ばして各企業の労使の判断に委ねることも選択肢になるという意見が出ています。同じ論点の中では、育児休業から復帰した人や退職する人など、年次有給休暇を与えられる期間が短い人の時季指定義務の日数(5日)をどう考えるかも議論されています。

年5日との関係では、この記事で確認した第39条第8項が変わらない限り、時間単位の取得は年5日に算入されません。 上限が広がった場合、時間単位で取れる日数が増えるほど、取得の記録が増えても年5日の達成が進まないという差は大きくなりえます。

時間単位年休の上限の検討例と、年5日への算入

年5日の状況を確認する

年5日の取得状況を1人ずつ確認するための資料を用意しています。日単位・半日単位・時間単位の区別を含めた確認項目をまとめたものです。

付与日数そのものを確認したい場合は、入社日と週の所定労働日数を入れるだけで計算できるツールもあります。

有給計算ツールを開く

ヤスモは、付与分ごとの取得状況を従業員ごとに管理し、年5日の達成状況を取得ペースから区分して表示するツールです。

この記事で確認した条文・資料

  • 労働基準法:第39条第4項・第5項・第6項・第7項・第8項、第120条第1号
  • 厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(PDF)
  • 労働政策審議会 労働条件分科会 第206回(2025年12月24日)資料No.2-1
  • 労働政策審議会 労働条件分科会 第211回(2026年9月16日)資料:資料No.2-2(論点)、資料No.2-3(規制改革実施計画・労働基準関係法制研究会報告書の抜粋、これまでの主な意見の整理)
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