年5日の取得義務は、基準日から1年間で5日を取得させる仕組みです。ところが実務では、その1年間をまるごと働く人ばかりではありません。付与期間の途中で育児休業から復帰する人、休職していた人、途中で退職する人がいます。
こうした人にも5日が必要なのかを、条文と厚生労働省のQ&Aで確認します。あわせて、2026年に労働政策審議会で議論されている見直しの論点も整理します。
結論
- 付与期間の途中で育児休業から復帰した人も、原則として年5日の対象
- 例外は、残りの労働日が、時季指定すべき残りの日数より少なく、5日を取得させることが不可能な場合
- 付与期間の前から休職していて、期間中に一度も復職しなかった場合などは、法違反を問わないとされている
- 退職する人を対象から外す定めは、条文にはない
- 期間が短い人の日数をどう考えるかは、2026年9月の労働政策審議会でも論点のまま(2026年10月7日時点で未決)
条文は「基準日から1年以内に5日」
年5日の取得義務を定めた条文です。
使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
対象は、その回に付与される日数が10労働日以上の人です。条文には、付与期間の途中で休業した期間や、退職で期間が短くなる場合を考慮する定めはありません。 そのため、育児休業や退職の場面での扱いは、厚生労働省のQ&Aで確認することになります。
育児休業から復帰した人
厚生労働省の「改正労働基準法に関するQ&A」に、そのものずばりの問いがあります。
付与期間の途中に育児休業から復帰した労働者等についても、法第39条第7項の規定により5日間の年次有給休暇を取得させなければなりません。ただし、残りの期間における労働日が、使用者が時季指定すべき年次有給休暇の残日数より少なく、5日の年次有給休暇を取得させることが不可能な場合には、その限りではありません。
ポイントは2つです。
- 復帰した時点で、5日の義務は消えない。 原則は、残りの期間で5日を取得させる
- 例外になるのは、復帰日から付与期間の末日までの労働日が、時季指定すべき残りの日数より少ない場合
復帰後の労働日と、残りの日数を比べる
例期間の途中で復帰
原則どおり5日を取得させる
期間の末日直前に復帰
5日は不可能=Q&Aのただし書の場面
残りの日数=5日からその付与期間にすでに取得した日数を引いた日数(この例は取得0日)
時季指定すべき残りの日数は、5日から、その付与期間にすでに取得した日数(本人の請求や計画的付与による取得)を差し引いた日数です。たとえば、育休に入る前に3日取得していれば、残りは2日です。⚠️ 計画的付与(第39条第6項)には、書面による労使協定が要ります。
なお、このQ&Aは「その限りではありません」としていますが、残りの労働日がある場合にその日数をどう扱うかまでは書いていません。
育児休業の期間は、有給が付与されるかどうかを決める出勤率の計算では、出勤したものとみなされます。付与の判定については年5日の取得義務の記事で整理しています。
休職していた人
休職についても、同じQ&Aに問いがあります。
例えば、基準日からの1年間について、それ以前から休職しており、期間中に一度も復職しなかった場合など、使用者にとって義務の履行が不可能な場合には、法違反を問うものではありません。
挙げられている例は「期間中に一度も復職しなかった場合」です。期間の途中で復職した場合は、育児休業からの復帰と同じく、残りの労働日と残りの日数の関係で考える形になります。
退職する人
退職する人について、条文には対象から外す定めがありません。 付与期間の途中で退職する人も、第39条第7項の文言上は対象に含まれます。
一方で、退職する人を名指しして扱いを示したQ&Aは、厚生労働省の「改正労働基準法に関するQ&A」と「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」の2つの資料では見当たりませんでした。
関連する記述として、「わかりやすい解説」は、計画的付与の労使協定を結ぶ際に、定年などであらかじめ退職することが分かっている人を計画的付与の対象から外しておくことを挙げています。退職日が決まっている人は、計画的付与で年5日を満たす運用に乗らないことがある、という点は確認しておく形になります。
1人でも5日に届かなかったら
同じQ&Aは、年5日を取得できなかった人が1人でもいた場合について、法違反として取り扱うとしたうえで、次のように述べています。
労働基準監督署の監督指導において、法違反が認められた場合は、原則としてその是正に向けて丁寧に指導し、改善を図っていただくこととしています。
罰則は、第39条第7項が第120条第1号に列挙されているため、30万円以下の罰金の対象になりえます。
次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
また、時季を指定しただけでは足りず、実際に基準日から1年以内に5日を取得していなければ法違反として扱う、ともされています(同Q&A 3-20)。
見直しが議論されている(2026年10月時点)
期間が短い人の扱いは、見直しの論点にもなっています。2025年1月の厚生労働省の労働基準関係法制研究会の報告書は、次のように整理しました。
当該付与期間の残りの労働日が著しく少なくなっている労働者に対してまで、他の労働者と同じ日数の時季指定義務を課すことは、使用者や労働者にとって不合理な制約になる場合があることからも、取扱いを検討することが必要である。
これを受けて、労働政策審議会の労働条件分科会では、2025年12月24日(第206回)と2026年9月16日(第211回)に、次の論点が示されています。
- 育児休業からの復帰者や退職する人など、年次有給休暇を与えることができる期間の短い労働者についても5日となっている日数を、どのように考えるか
2026年10月7日時点では、日数を変えることは決まっていません。 いまの扱いは、上で確認した条文とQ&Aのとおりです。
確認する点
付与期間の途中で復帰・復職・退職する人がいる場合、次の点を確認する形になります。
- その人の基準日と、付与期間の末日
- 復帰日(または退職日)から付与期間の末日までの労働日の数
- その付与期間に、すでに取得した日数(日単位・半日単位。時間単位の取得は年5日に数えない=時間単位年休の記事)
- 5日からすでに取得した日数を引いた、残りの日数と、残りの労働日の比較
年5日の状況を確認する
年5日の取得状況を1人ずつ確認するための資料を用意しています。基準日・取得済み日数・残りの日数を確認する項目をまとめたものです。
付与日数そのものを確認したい場合は、入社日と週の所定労働日数を入れるだけで計算できるツールもあります。
ヤスモは、付与分ごとの取得状況を従業員ごとに管理し、年5日の達成状況を取得ペースから区分して表示するツールです。
この記事で確認した条文・資料
- 労働基準法:第39条第6項・第7項・第8項、第120条第1号
- 厚生労働省「改正労働基準法に関するQ&A」(平成31年4月)(PDF):3-6・3-19・3-20・3-22
- 厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(PDF)
- 労働政策審議会 労働条件分科会 第206回(2025年12月24日)資料No.2-1
- 労働政策審議会 労働条件分科会 第211回(2026年9月16日)資料:資料No.2-2(論点)、資料No.2-3(労働基準関係法制研究会報告書の概要)
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本サービスは、労働基準法39条の年次有給休暇に関する「事実の可視化」と、取得ペース分析・取得候補日の提示・通知等による「判断材料としての情報提示」を目的としています。これらは利用者および従業員の判断材料を提供するものに留まり、特定の取得行為を指示・指導・助言するものではありません。本サービスは、利用者が登録・選択した情報に基づく年次有給休暇の管理補助ツールです。取得候補日は参考情報であり、取得日を決定するものではありません。取得日の決定その他の個別の労務判断、及び帳票を法令に基づく記録として使用する場合の内容確認は、利用者が行ってください。具体的な労務対応は、社内の労務担当または社会保険労務士にご相談ください。
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