有給休暇の繰越と時効|2年で消えるのはなぜか、条文で確認する

有給休暇が2年で時効消滅する根拠、繰越分の消化順に決まりがあるのか、繰越分は年5日に数えられるのかを、労働基準法の条文で確認して整理します。

有給休暇は2年で消える、とよく言われます。ただ、根拠の条文を開くと「2年」という数字は年次有給休暇の条文には書かれていません。別の条文にあります。

この記事では、時効の根拠、繰越分をどの順で消化するのか、繰越分は年5日に数えられるのかを、条文で確認しながら整理します。

「2年」は第39条ではなく第115条にある

時効を定めているのは労働基準法第115条です。

この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
出典: 労働基準法 第115条

条文は請求権を2つに分けています。賃金の請求権が5年それ以外の請求権が2年です。

年次有給休暇を取る権利は、賃金の請求権ではありません。 休む権利であって、お金を請求する権利ではないからです。したがって後半の「その他の請求権」にあたり、2年になります。

賃金の「当分の間3年」は、有給には及ばない

ここが取り違えられやすい点です。第143条に、当分の間の読替えを定めた項があります。

第百十五条の規定の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。
出典: 労働基準法 第143条第3項

読み替えているのは賃金の請求権の部分だけです。「その他の請求権は2年」という後半には手を触れていません。

つまり、賃金は5年が当分の間3年になり、有給休暇は最初から2年のままです。「賃金の時効が3年になったから有給も3年」ではありません。

繰越の消化順は、条文に定めがない

前年から繰り越した分と今年付与された分のどちらから先に使うのか。この点について労働基準法に定めはありません。

条文に無い以上、就業規則などの定めによります。定めが無い場合にどう扱うかは解釈の問題になるため、社内の規程を確認する点になります。

古い付与分から消化するか、新しい分から消化するか

実務上の影響ははっきりしています。新しい付与分から先に消化すると、繰越分が使われないまま2年の時効に到達します。 逆に古い分から消化すれば、消滅する日数は減ります。

どちらの扱いにするかは会社の判断ですが、どちらの扱いをしているかを説明できる状態にしておく必要はあります。管理簿は労働者ごとに時季と日数と基準日を記録する書類なので、日数の根拠を問われる場面があります。

繰越分の取得も、年5日に数えられる

年5日の取得義務を定めた第39条第7項と、取得済み日数を差し引く第8項を読みます。第8項はこう書かれています。

前項の規定にかかわらず、第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。
出典: 労働基準法 第39条第8項

条文は「繰越分かどうか」を区別していません。 第5項は労働者本人の請求、第6項は計画的付与です。実際に与えた有給休暇の日数を、5日を上限に差し引くと書いてあるだけです。

⚠️ 計画的付与(第6項)には労使協定が要ります。

使用者の時季指定のほかに、5日へ算入される取得

対象になるかどうかは、その回の付与日数で決まる

もうひとつ取り違えやすい点があります。年5日の対象になるかどうかは、繰越分を足した残日数ではなく、その回に付与された日数で決まります。

第39条第7項は対象を「使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」と書いています。その年に何日付与したかが基準で、手元に何日残っているかではありません。

たとえば週3日勤務で、その回の付与が8日、前年からの繰越が6日あって残日数が14日という人がいたとします。残日数は14日ですが、その回の付与は8日なので年5日の対象にはなりません。

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人数が増えると、消滅日も人ごとに違う

繰越と時効を追うには、どの付与分から何日消化したかを、人ごとに持つ必要があります。基準日が人ごとに違うので、消滅する日付も人ごとに違います。

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この記事で確認した条文

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