Excelでの有給管理は、従業員が10名前後で、全員の入社月が近く、付与日を揃えているあいだは十分に機能します。破綻するのは規模が大きくなったときではなく、付与日が人ごとにバラバラになったときです。
この記事では、Excelが構造的に苦手な5つの場面と、移行先を選ぶときに確認すべき点を整理します。
まずExcelで足りるケース
先に、移行しなくてよい条件を書きます。
- 全員に同じ日(4月1日など)に一斉付与している
- 入社1年未満の従業員がいない、または毎年ほとんど増えない
- 半日単位・時間単位の取得を使っていない
- 有給の繰越が発生していない(毎年使い切っている)
このすべてに当てはまるなら、Excelのままで問題ありません。以下は、どれかが崩れたときに何が起きるかの話です。
Excelが構造的に苦手な5つの場面
1. 付与日が人ごとに違う
入社日を基準に付与している場合、付与日は入社日ごとに散らばります。100名いれば、年間で100回付与日が来ます。
「今月付与の対象者は誰か」を毎月手で拾い出すことになり、1人見落とすとその人だけ有給が足りない状態が1年続きます。表の行が増えるほど、抜けても気づけません。
2. 比例付与の判定が毎年変わる
週の所定労働日数が少ない従業員は比例付与になります。付与日数は勤続年数で増えるため、同じ人でも毎年変わります。
週3日勤務の方は勤続5年6か月で10日に到達し、その時点から年5日の取得義務の対象になります。この切り替わりは、勤続年数を毎年再計算しないと検知できません。VLOOKUPで表を引く方式にしていても、参照する勤続年数の更新を忘れると静かにずれます。
3. どの付与分から消化したかが追えない
これがExcelで最も再現しにくい部分です。
有給は古い付与分から順に消化するのが一般的な運用です。前年の繰越分から先に使えば、時効による消滅を防げます。ところが、この管理には次の情報が要ります。
- 付与分ごとの残日数(今年度分・前年度分をそれぞれ別に持つ)
- 取得1件ごとに、どの付与分から何日引いたか
- 半日取得(0.5日)の端数
残日数を1つのセルで持っている表では、この区別ができません。合計は合っていても、「あと何日で消滅するのか」が出せなくなります。
合計だけでは内訳が見えない
例1セルで持つ表
合計
12日
付与分ごとの期限や残り内訳は分からない
付与分ごとに持つ表
前年度分 5日
期限 2027/3/31(例)
今年度分 7日
期限 2028/3/31(例)
4. 2年の時効消滅
有給は付与から2年で時効消滅します。消滅日は付与分ごとに違うので、「いつ、誰の、何日が消えるか」は付与分ごとの残日数がわかっていないと計算できません。
3の問題が解けていないと、4も自動的に解けません。消滅してから気づくことになります。
5. 年5日の期限が年度末と一致しない
年5日の取得義務の期限は、その人に有給が付与された日から1年間です。会計年度の末日ではありません。
入社日基準の会社では期限が人ごとに違い、一斉付与の会社でも入社直後の初回だけは基準日がずれます。「年度末までに全員5日」という管理では、年度の途中で期限を迎える人を取りこぼします。
移行先を選ぶときに確認すること
Excelから移す場合、次の点を確認しておくと後戻りが減ります。
| 確認すること | なぜ必要か |
|---|---|
| 自社の付与ルールを設定で再現できるか | 入社日基準/一斉付与/初回だけ前倒し、など会社ごとに違う |
| 消化を付与分ごとに引き当てているか | 時効消滅までの日数が出せるかが、ここで決まる |
| 年5日の期限を従業員ごとに持っているか | 年度末で一括判定する作りだと、3で書いた取りこぼしが起きる |
| 年次有給休暇管理簿を出力できるか | 時季・日数・基準日の記録と、期間満了後3年間の保存が法定の要件 |
| 現在のExcelから取り込めるか | 過去の付与・取得を捨てると、繰越と時効の計算ができない |
| 担当者が変わっても引き継げるか | ファイルが個人のPCにある状態を解消することが移行の目的の一つ |
必要な機能だけを見ることをおすすめします。 打刻やシフト管理まで含む仕組みに乗り換えると、有給管理のために全社の勤怠運用を変えることになり、移行そのものが止まりがちです。
古い付与分から減る
例取得前
2日取得
5日取得
ヤスモの場合
ヤスモは、年5日の取得義務の管理に特化したツールです。打刻やシフトは扱いません。
- 付与日と付与日数を、入社日基準/一斉付与/初回付与の起点の設定にしたがって自動計算します(比例付与を含む)
- 消化は古い付与分から順に引き当てるため、付与分ごとの残日数と時効消滅までの日数がわかります
- 年5日の期限を従業員ごとに管理し、期限までの残り日数で並べ替えられます
- 年次有給休暇管理簿を、時季・日数・基準日を含む形で出力できます
- 既存のデータはCSVで取り込めます(過去の付与・取得を含めて移せます)
導入時点ですでに期限が過ぎていた分は、確認した記録としてまとめて残せます。Excelから移した直後に大量の「期限超過」が並んでも、1件ずつ処理する必要はありません。
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